請求業務が自動化されるとき、私たちはスタッフにこう向き合った
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物流プラットフォームを導入して、請求業務の大部分が自動化された。照合・入力・確認といった作業がシステムに移ったことで、これまでその業務を担っていた事務スタッフの「必要人数」が変わった。 経営的には、明確な成果だ。でも私たちがまず考えたのは、システムのことよりも、現場のスタッフにどう向き合うか、だった。 この記事は、その過程で私たちが考えたこと、実際に伝えたことの記録だ。
1.「効率化」という言葉が、別の意味に届く
DXの説明でよく使われる言葉がある。「業務効率化」「生産性向上」「コスト削減」。 どれも正確だ。でも、受け取るスタッフにとって、これらの言葉は時として別の意味に聞こえる。
「あなたの仕事は、もう必要ない」
私たちもそのことを、最初から意識していた。言葉の選び方ひとつで、変化への受け取り方はまったく変わる。だからこそ、「何を」伝えるかより先に、「どういう順番で」伝えるかを時間をかけて考えた。
2.最初に伝えたのは、システムの話ではなかった
説明の場を設けたとき、私たちはシステムの機能やコスト削減の数字から話し始めなかった。スタッフが最初に知りたいのは、そこではないと思ったからだ。
「私の役割は、これからどうなるのか」
この問いに答えないまま話を進めると、不安だけが積み上がっていく。だから最初に伝えたのは、「あなたの今後」についてだった。業務が変わることで、どんな役割に移っていくのか。それは本人にとって成長になり得るのか。会社として、どんなサポートをするつもりでいるか。 システムの説明は、その後だった。
3.「全部うまくいく」とは言わなかった
「誰も困らない」「役割はちゃんと用意してある」という説明で場を収めることは、できたかもしれない。でも私たちは、そうしなかった。 実際にこう伝えた。
「請求業務にかかっていた時間は、大幅に減ります。その分、これまで手が回らなかった顧客対応や、データを活用した業務に力を入れていきたいと考えています。全員の仕事がなくなるわけではありませんが、業務の中心が変わることは正直にお伝えします」
きれいごとで包みすぎると、実態とのズレが生じたとき、かえって不信感を深める。誠実に伝えることが、長期的な関係の土台になると思っている。
4.これまでの仕事に、言葉で敬意を示す
説明の場で、私たちがもうひとつ大切にしたことがある。これまでの仕事への敬意を、言葉にして伝えることだ。 長年、請求業務を丁寧に担ってきたスタッフがいる。ミスなく、正確に、締め切りを守り続けてきた人たちだ。システムがその業務を引き受けるようになっても、その人たちがやってきたことの価値は変わらない。 だから、こう伝えた。
「これまでこの業務を支えてくれたみなさんの仕事があって、今のデータの精度がある。そこへの感謝は変わりません」
短い言葉だけれど、それがあるかないかで、受け取り方はまったく違う。
5.「次のステップ」を一緒に考える
どれだけ丁寧に説明しても、実際に役割が変わることは、本人にとって簡単ではない。私たちはそのことを軽く見ないようにしている。 社内での異動や役割転換の可能性を、形式的ではなく真剣に探すこと。新しい業務に向けたスキルアップの時間とサポートを提供すること。その人の「次」を、会社として一緒に考える姿勢を持ち続けること。DXはコストを下げるためだけにあるわけではない。人が本来やるべき仕事に集中できる環境をつくるためのものだ。そのプロセスで「人をどう扱うか」が、会社の姿勢として滲み出る。
6.変化の中で、人との関係をどう保つか
物流業界は今、大きな変化の只中にある。2024年問題をきっかけに、業務の見直しやシステム化が一気に加速している。 そのなかで、現場のスタッフが「自分はここで必要とされている」と感じながら変化を迎えられるかどうかは、技術の問題ではなく、説明と関係づくりの問題だと私たちは思っている。 DXで人が傷つくとすれば、多くの場合、システムそのものではなく、その進め方と言葉の選び方にある。 私たちはまだ途中にいる。でも、この問いを持ち続けながら進むことが、長く一緒に働ける組織をつくることにつながると信じている。